今さらだけど「シングストリート」を劇場で見た時の感想
シングストリートを見た直後の感想を下書きに入れてあったので、投下します。以下、公開当時(といってもかなり終わりの方)の感想です!!
高校生の頃、好きになった男の子がバンドをやってるって情報を聞きつけて、何とか仲良くなろうと溜まり場になってる彼の友達の家に足を運んだ。その部屋にはベッドや本棚といっしょくたにギターやベース、ピアノ、ドラムセット、アンプ、民族楽器まで詰め込まれていて、みんな何となく曲を合わせたり音を出していた。そんな初めて見る世界に惹きつけられて…っていうのは気持ちの1割未満で、ほぼ下心でその部屋に出入りするようになって、自作のCDの録音に参加したり、隣町のライブハウスに行ったり、違う学校の知り合いが増えたりして。大学生になって「そういう仲間」の一員になりたくて軽音楽部に入部。それからはバカみたいな青春のお手本のような毎日を過ごした。
ってわけで、「シングストリート 未来へのうた」を見てきたんだよー!!!
やたらと私のツイッターのタイムラインで、色んな人がええぞええぞと言っていたので公開終了間際に滑り込み。今から「いや~いい映画だったわ~」って感想を垂れ流すけど、もうほとんどの映画館が公開終了しようとしてますわ。ごめんね!
ネタバレもします!
あらすじ
舞台は1985年のアイルランドの街、ダブリン。主人公である14歳のコナー少年は毎日全然ハッピーじゃない。お父さんは失業してお母さんと毎日喧嘩してるし、お兄ちゃんは引きこもりぎみ、お姉ちゃんは勉強勉強。家庭の出費を抑えるために民度の低い学校に転校させられて、不良にネズミをぶつけられたり先生に裸足で歩かされたりして、これからずっとクソみたいな毎日が続くのか…!?って時に、年上の美少女ラフィーナと出会って一目ぼれ。彼女の気を引くためにバンドを結成して、ちょっと変なメンバーたちと曲とMV作りに勤しみながら成長していく物語…
です!
80年代の音楽!ファッション!恋!夢!青春!仲間!家族!ヒュー!最高!って並べると過剰な感じがするし、だいたい「好きな女の子を振り向かせるためにバンドをやる」なんてベタすぎるんじゃないかって思うんですけど、これがもう見事に美しいストーリーにまとまってて素晴らしいんですよ。
最初は私も「青春押しつけムービーなんじゃないの?」と構えてたんですけど、そんなこと無くて、いや、もちろん「懐かしいなぁ」とか「あるある」ってシーンは山ほどあるんだけど「丁度良さ」がすごい。奇抜なMV作ったり、好きな音楽にすぐ影響受けてメイクしたり髪型変えたり、「ひぇー!恥ずかしいー!」ってなりそうなところなのに、これがまた心がザワつかない程度のイタさなんですよ。
周りで見た人たちは「こんな青春したかった!」勢と、「懐かしい!こんな頃ってあったよね」勢がいて、それぞれに楽しんでいたみたいです。
以下、グッときたところを並べる
・少年らしすぎる少年らしさ
妄想MVのシーンで、勿論あの子に来て欲しいから扉からやってくるんだけど、それだけじゃなくて不仲の両親が手を取り合ってダンスをする(バックトゥザフューチャーは両親くっつける話だしね!)のとか、引きこもりのお兄ちゃんがカッコよくライバルをやっつけてくれるのとか、あのシーンが一番爆泣きしました。
好きな女の子がいて、仲間と音楽をやって、それでも「家族が仲良くしていて欲しい」って強く思ってるのが、不良になりきれない少年らしさがあって。
それまで前半はキラキラした青春を見せつけてくるだけの映画には騙されないぞっと心の中で構えていたのですが、このあたりでそのガードは砕かれましたね。
・イタタタタターとならない絶妙さ
いやもうね、少年がバンドするって言うたらもうイタそうなの予想できるじゃないですか。サムいシーンきそうじゃないですか。
でもそれが変に暑苦しすぎず、程よい熱量で安心して見れたし、何より色んな影響受けちゃってるのとか女の子にかっこつけるのとかが、すごく微笑ましく見ることができました。
・なんかわからんけど嫉妬の炎で焼き尽くされなかった
「少年少女の青春もの」を見た時に私は先回りして「こんなの永遠じゃない!」「そんなこと言って10年後には違うことしてるよ!」って思ってしまうんだけど(23歳くらいの時に「耳をすばせば」見て「10年経って夢も愛もそのままなんてないよ!この10年でどれdけ変わってしまったか!」ってエンドロールでひとり号泣)、シングストリートはそういう切なさとか悲しさを全然感じなくて本当に手放しで楽しめました。
あとキラキラした物語を見た時の痛烈な憧れも無く。
これは本当に個人的な話だけど「音楽」とか「バンド」って私には絶対かなわないってかなり早い段階で理解して、ずっと純粋に楽しんできたからなんだと思います。「リンダリンダリンダ」はちょっとうらやましかったけど。
あの頃の青春再放送みたいなシーンは山ほどあって、部屋にピアノもドラムセットもアンプも民族楽器まであるのとか、まんま友達の家とかぶるし、何度もフラッシュバックしたけどね。
唯一ちょっと切なくなったのは芝生で曲作りをしていたシーン。ロンドンに憧れている若者がのどかな公園で友達とせっせと曲作りをしているのは、何だか、あぁ結局この世界から出れないのかもしれないな、とちょっと思ってしまいました。
この芝生のシーンは私の青春回想ポイントでもあって、あぁ、部室前の芝生やベンチでアホみたいな歌詞つけた曲を作っていたな~とか思い出しました。
地元もそうなんだけど、四方を山に囲まれた土地で、都会、というか大人の世界はまだ遠く、強く憧れてるけどなんとなく守られていて、うっかりするとそのまま死ぬまでいついてしまいそうな。ふわっとよぎりました。
例えば「あの頃ペニーレインと」は、いつか壊れてしまうんだろうなっていうあやうさがムンムンににじみ出てて辛かったけど、こっちにはそこまでの切なさは漂ってなくてそれもよかったです。
・兄貴!
兄弟(お姉ちゃんもね、みんなで踊るシーンも泣けた)が仲良いのが本当に素敵。
お兄ちゃんは基本的には弟に時に厳しく、しっかり音楽の先生をやってるんだけど、後半のウワーッとキレちゃうシーン、あれがすごく良かった。最初の方のテープをぐしゃぐしゃにしちゃうのとか普通の友達じゃさすが出来ないし、一方的にあれこれ音楽を教えたり、ラストの無条件に手を貸すのとか、よく考えたらそれも肉親じゃないと出来ないなって。
でもやっぱりあの突然むちゃくちゃキレるっていうのがすごい兄弟っぽくて良かった。
・思わず拍手しそうになる
妄想MVとかラストの学校でのライブシーンとか、うっかり声をあげそうになるし、拍手しそうになる。妄想MVは違うけど、過剰じゃなくて丁度いいんだろうな。
主演が初演技ってパンフレットで見てびっくりしました。
えぇえ~!あのビスケット食べながらキッスするシーンがすごかったんですけど。劇場の中の人たち全員が心をひとつにしたよね…。すごい暖かい目で見守っていました。あの目線!あの、え、ちょっとずつ近づいてない?って距離感!あのキッスにも拍手したかったよ。実際には多分ちょっと赤面したけど。
時代的にも年齢的にも懐かしくてキラキラしてた「あの頃」をただ思い返させるだけの映画ではなく、あらゆる人にグッとくるであろう素敵な映画でした。